北視会

平成24年度における運動の成果並びに決議処理報告
(平成24年4月1日から平成25年3月31日まで)


はじめに
 本連合では、6月7日から3日間、千葉市アパホテル&リゾート東京ベイ幕張において、全国の代表並びに関係者など約2200人参加のもとに、第65回全国盲人福祉大会を開催し、各都道府県・政令指定都市並びに各協議会から提出された生活分科会45件、バリアフリー分科会27件、職業分科会18件と、本部提出の議題などを活発な議論を経て可決し、さらには大会において12項目に及ぶ決議を採択した。
 これを受けて執行部では、6月26日に総合企画審議会及び理事会を開催し、大会で議決・採択された要求事項を精査し、翌27日に厚生労働省をはじめとする11省庁と日本郵政株式会社に陳情し、その実現に向けて活動を展開した。
 年間を通じても、前記の陳情項目の実現を図るべく運動を続けるとともに、政府が設置する各種委員会や審議会に代表を派遣し、関係当局との間で交渉を重ね諸問題の解決に向けた取組を行った。

T 法律、福祉制度、被災地支援
1.法律の制定、改正
 障害のある人の権利条約批准に向けた国内法の整備として、平成24年度には、改正障害者基本法及び障害者虐待防止法が施行され、わが国における新たな障害者政策がスタートした。
 障害のある人の権利条約の批准にとって、欠かすことのできない障害者差別禁止立法については内閣に設置された障害者政策委員会差別禁止部会において論議が重ねられ、平成24年9月には立法に向けた「障害を理由とする差別禁止に関する法制についての差別禁止部会の意見」が内閣総理大臣に提出された。平成24年12月16日に行われた衆議院総選挙において政権が交代したものの、その後も障害者差別禁止立法の準備が進められ、平成25年4月にようやく与党プロジェクトによって法案がまとめられ、同月26日の閣議において「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案」が決定され、現在国会において審議中である。
 また、就労の場における差別禁止と合理的配慮を法制化するため、障害者雇用促進法の改正に向けた論議が進められた。そして、平成25年3月に改正案がまとまり、すべての事業主に対する障害者差別の禁止と合理的配慮義務が盛り込まれた改正案が4月に閣議決定され、現国会において審議中である。
 他方、聴覚障害者を中心に取り組まれていた単独法としての「情報・コミュニケーション法」案については、視覚障害者をも含めた情報保障法としての運動に発展させることで聴覚障害者の団体との協議を開始し、本連合を含む情報・コミュニケーション障害4団体としての運動が開始された。そして、4団体の主催による初の試みとしてのシンポジウムを平成25年3月に開催し、情報・コミュニケーション保障の重要性を確認し、今後その実現に向けた運動を進めていくこととなった。

2.福祉制度の改善に向けた取組
 視覚障害者の入通院時における介助と安全確保のための制度を実現させるため、福祉と医療の狭間における制度の在り方に関するプロジェクトを立ち上げた。プロジェクトは、日本看護連盟の副会長や社会保障法の学者を交え、問題点を分析するとともに、視覚障害当事者と病院に対して、入通院時におけるヘルパー利用に関するアンケート調査を実施し、視覚障害者が入通院時に経験したトラブルやヒヤリハット事例の収集を行った。今後は、そうしたアンケート調査の結果と制度の問題点を踏まえた解決策を厚生労働省に提言する予定である。
 平成23年10月に開始された同行援護事業は、1年半を経過した今日においても、本連合が強く求めてきた全国一律の制度とはなっていない。支給量(利用時間)、利用範囲、利用内容などが、視覚障害者のニーズに沿って全国一律の制度となるよう、同行援護事業所等連絡会と連携し、厚生労働省に働きかけてきた。

3.東日本大震災による被災視覚障害者への支援と災害時の支援体制の確立に向けた取組
 東日本大震災により被災し、今なお復興が実現していない東北3県に対し、年間を通した支援を行った。本連合から現地に役員を派遣し、東北3県4団体との連携を図り、被災視覚障害者からのヒアリングを実施するなどして、現状を把握することに努めた。
 こうした現地における活動によって得られたニーズに基づき、被災地の団体と被災視覚障害者に対し、第2弾としての義援金を送るとともに、福島県の視覚障害者に対して「おしゃべり線量計」を届けた。
 また、大災害から2年が経過する中で、被災状況が風化することを防止するだけでなく、今後の大災害への備えに結びつけるため、被災視覚障害者の体験を語る「語り部プロジェクト」を現地団体とともに立ち上げるための準備が開始された。今後は、語り部を全国に派遣し、その体験を生かした防災・減災に向けた活動を進めて行く。

U 交通安全対策とバリアフリー化に向けた取組
1.公共交通機関に対する要望
 視覚障害者が安心して駅ホームを利用することができるように、可動式ホーム柵の設置や内方線付き誘導用ブロックの設置を国土交通省や関係機関に要望した。
 また、可動式ホーム柵への点字標記については、触読しやすい位置に設置するよう要望した。

2.情報・通信におけるバリアフリー化
 視覚障害者はテレビを重要な情報源としているが、これまでテレビの音声をラジオで聞いていた視覚障害者は、地上デジタル放送の実施によってそれができなくなった。そこで、ラジオでも地デジ放送が聞けるようにするための要望活動を展開し、数社によって地デジが聞けるラジオが開発され、販売が開始されるようになった。しかも、地デジ放送が聞けるラジオは、日常生活用具に該当することが厚生労働省から全国の自治体に示された。
緊急放送の字幕の音声化と外国語放送の音声化並びに解説放送の拡大を図るため、関連委員会に委員を派遣するとともに、関係省庁に対して陳情活動を行った。

3.公共施設のバリアフリー化
 公共施設や交通機関の障害者用トイレの設備関係の統一化を図るために、関係会議に委員を派遣し、その改善を働きかけ。
 また、公共施設や交通機関において、節電対策が実施される中で、弱視者や色覚機能障害のある視覚障害者の安全・安心に及ぼす影響に関するアンケート調査等を実施し、それに基づく、各方面に改善を要望した。

4.紙幣のバリアフリー化
 本連合は長年にわたって、財務省等に対して、視覚障害者がわかりやすい紙幣になるよう、その改善を求めてきた。そうした視覚障害者の声を受けて、財務省などの関係機関では、その第1弾として、5000円札の改良を決定するに至った。また、紙幣をスマートフォンを用いて音声識別ができるようになり、さらには紙幣の識別専用機の開発も予定されている。

V インクルーシブ教育の実現に向けた取組
1.統合教育の推進
障害の有無に関係なく地域の一般校で教育を受けることができる統合教育については、本人または保護者の希望によって実現されつつある。そして、教科書バリアフリー法によって小中学校における点字及び拡大文字による教科書が保障されるようになったが、未だ高等学校における教科書等の保障は実現していない。引き続き統合教育に対する本人または保護者の選択が保障されるとともに、高等学校での統合教育を含め、教科書や教材が本人の希望に沿って保障されるよう要望した。

2.障害のある人の権利条約は、インクルーシブ教育の実現を求めているが、わが国では未だインクルーシブ教育と統合教育を切り離して考えようとしている。視覚障害を有する児童生徒が盲学校(視覚特別支援学校)で学ぶ場合であれ、統合教育を受けている場合であれ、本人の特性に応じた教科書や教材が保障されるとともに、専門的経験のある教職員の支援が受けられるインクルーシブ教育が実現されるよう働きかけた。

W 職業対策
1.あはき関係
 外部からの委員をも加えたあはき問題戦略会議を設置し、一昨年にまとめた「あはきプロジェクト委員会報告書」を具体化するための取組を行った。
無資格者対策として引き続き厚生労働省や警察庁に取締の強化を求めるとともに、保険取扱いにおける免許所持者の優位性や国民に対し無免許者と免許所持者の異別性が明確となるように働きかけた。その結果、厚生労働省からは、無免許者の取締を強化することが約束され、広告への掲載事項の改善を検討することや診療報酬請求書の記載方法の改善を図ることが検討されることとなった。
柔道整復師による違法な保険取扱によって、あはき師の職域が侵されていることを厚生労働省及び会計検査院に訴え、違法な保険請求の取締強化を求めた。その結果、厚生労働省は柔道整復師による保険取扱のあり方を検討する専門委員会を設置し、見直しの協議を開始した。また、会計検査院は、これまでにも違法・不適切な保険請求を是正するための勧告を厚生労働省に行ってきたが、その勧告に基づく改善を見守るとともに、新たな調査によって違法な保険請求が確認された場合には、再度の勧告もありうるとしている。
 なお、厚生労働省に対しては、会計検査院からのすでになされている勧告に基づく是正措置を速やかに実行することをあわせ申し入れたのに対し、専門官からは現在是正措置のための検討がなされている旨が報告された。
さらには、加盟各団体を通じて、国民健康保険や後期高齢者医療保険を所管する自治体に対し、柔道整復師による違法・不適切な請求を防止するための適切な審査を実施するよう求めた。

2.一般雇用の促進
 視覚障害者の一般雇用を促進するため、厚生労働省に対し、障害特性を理解したジョブコーチなどの支援員の配置や補助機器の拡大を求めた。また、視覚障害者の一般雇用が他の障害者に比して増大していないことを踏まえ、障害種別ごとに雇用率を分析し発表するよう求めた結果、新規採用に関しては障害種別ごとの採用者数が発表されるようになった。さらには、ヘルスキーパー等が介護保険事業所を含む福祉施設や公共施設に優先的に採用されるよう要望した。
 視覚障害者の多くは、あはき業を開業し、あるいは音楽教室を経営する自営業者であるが、保険請求、領収書などの事務処理において代筆が必要であり、保健衛生の維持などからも一定の支援が必要である。自営業者に対しても、雇用における職場介助者(ヒューマンアシスタント)に準じた制度の創設を強く求めた。その結果、通勤や自営業者の出張(外出)時における支援をも含めた検討が開始された。

X 組織の強化
1.将来ビジョン検討会の設置
 視覚障害者福祉のあり方を検討するとともに、中長期における本連合としての活動目標を明らかとするための検討を開始した。歴代の青年協議会の会長を含めた幅広い委員による意見交換を行ったうえで、視覚障害者にとって安心安全で希望の持てる社会を実現するための本連合としてのプランを作成すべく議論を重ねた。

2.財政の健全化と加盟団体への支援
 平成24年度は、衆議院総選挙が行われたことから、点字の選挙公報ともいうべき選挙のお知らせを発行するプロジェクトの取組によって財政的にはゆとりを生じたが、引き続き財政の安定を図るための増収を図ることが必要である。また、加盟団体に対しては、さまざまな情報提供に努め組織活動を支援してきたが、今年度においては加盟各団体の会員増強を含めた組織強化のための具体策を提示するまでには至らなかった。

Y 国際交流
1.韓国盲人協会との交流
 本連合と韓国盲人協会(KBU)による第3回国際交流を1月17日(木)から20日(日)にかけて京都において開催した。韓国からは14名が来日し、大阪と京都で盲学校や福祉施設を見学した後京都において、本連合及び京都府視覚障害者協会の会員との間で、障害者差別禁止法をめぐる両国の状況や就労をめぐる問題を懇談し、スポーツや女性などの分野における情報交換などを行った。

2.国際委員会の活動
国際委員会は、日本盲人福祉委員会との連携によってWBU(世界盲人連合)及びWBUAPなどの国際組織に代表者を派遣し、情報収集と国際交流を進めた。


3.将来ビジョン検討会
 視覚障害者福祉のあり方を検討することで、10年、20年先の目標を明らかにし、幅広い意見を取り入れた上で、視覚障害者が希望を持ち、安心安全な社会を実現することを目的とした、本連合としての総合プラン を策定するために議論を重ねた。

Z平成25年度厚生労働省予算
 政府は平成25年1月29日の臨時閣議で平成25年度予算案を決定した。厚生労働省の障害保健福祉関係予算は、対前年度7.3%増の1兆3991億円となっている。
※身体障害者関係のみ掲載
A.障害保健福祉部関係
1.障害保健福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害児・者支援の推進:1兆3,711億円
(1)良質な障害福祉サービス等の確保(一部新規)
:8,229億円
(2)地域生活支援事業の着実な実施(一部新規)
   :460億円
(3)障害児・障害者への福祉サービス提供体制の基盤整備
   (一部新規):52億円
(4)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供
:2,187億円
(5)特別児童扶養手当、特別障害者手当等
:1,482億円
(6)障害児・障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進
:4.1億円
(7)障害支援区分の施行に向けた所要の準備
:3.0億円

2.障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等
(1)障害児・障害者の社会参加の促進:26億円

3.障害者への就労支援の推進:13億円
(1)工賃向上のための取り組みの推進(一部新規)
:4.3億円
(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進:8.1億円


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